人は辞めない。“環境”から離れるだけだ。

その人が“持ち味を発揮できる環境”が失われたとき、人は静かに職場を離れる。
いまの時代、辞める・辞めないはスキルでは決まらない。
安心できる環境を、人は静かに選んでいく。

人は、本来とても誠実だ。
簡単には仕事を手放さない。
迷い、悩み、何度も自分を見直し、それでも限界を越えたときに初めて一歩を踏み出す。

だから退職は、能力の問題でも、やる気の問題でもない。
その人の力が発揮されなくなった環境のほうが先に壊れていた。

◆ “辞める人”ではなく、“辞めさせてしまった構造”を見る

離職が増えるとき、
見直すべきは個人のメンタルではなく、以下のような“組織の摩耗”だ。

・同じ人にだけ負荷が偏る
・人手不足が放置される
・評価が曖昧で不公平感が蓄積する
・相談がしづらく、弱音が言えない
・成果より「無難さ」が評価される
・関係性の摩擦が放置される

こうした小さな歪みは、
一日では壊れない。
けれど、静かに人の心を削っていく。

そして、もっとも誠実な人ほど
環境の破綻を“自分の責任”として抱え込む。

◆ 人は環境が変われば、もう一度輝きだす

興味深いのは、
辞めた人の多くが「環境が変わっただけで、自分が別人のように働けるようになった」と話すこと。

同じ人なのに、環境が変わるだけで
・行動力が戻る
・表情が明るくなる
・思考が前向きになる
・職場への貢献度が急に上がる
そんな“再生”が起きる。

これは、個人ではなく “環境の力” がどれだけ大きいかを示している。

◆ 離職は、組織が気づくべき合図

離職は、裏切りではない。
敗北でもない。

それは、
組織がもっとよくなるためのサイン。

見直すべきは、
「人」ではなく「環境」。

責める視点から離れ、
育てる環境を整えれば、
人は本来の力を自然に取り戻す。

◆ 結び

人は辞めない。
環境から離れるだけだ。

ならば組織がやるべきことはシンプル。

人の力を殺さない環境をつくること。
それだけで、人はもっと、ずっと、輝ける。

いつもお目通しいただき、心より感謝申し上げます。

投稿者プロフィール

速水恭子
速水恭子くれたけ心理相談室(広島支部)心理カウンセラー
皆様がお健やかで穏やかに日々お過ごしになれますよう願っております

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