尊厳が揺らぐ関係の中で、心が壊れないために

どれだけ誠実に向き合っても、どれだけ努力を重ねても、
“理解されないまま耐え続ける関係”の中では、
少しずつ心が削られていきます。

今日は、その関係性の構造を丁寧にひもときながら、
あなたの心が壊れないために必要な「認識の土台」をお伝えしたいと思います。

■ まず知ってほしいこと

尊厳が揺らぐ関係では、
「自分が悪いのだろうか?」
「もっと頑張れたはず…」
と、あなた自身を責める方向に意識が向きやすくなります。

でもこれは、あなたの弱さや未熟さの問題ではありません。

“関係の構造そのもの”が、あなたの尊厳を揺らしてしまう
という仕組みが存在するのです。

その構造を知るだけで、
心の中に「自分を責めなくていい」という余白が生まれ、
呼吸が少し楽になります。

■ “すれ違いが起きやすい関係”には、理由がある

ASD(自閉スペクトラム症)などの神経発達特性を持つパートナーとの関係では、
コミュニケーションの「前提」が根本的に違うため、
言葉や意図が届きにくいことがあります。

これは性格の問題ではなく、認知の働き方の違いから起きるもの。

あなたが丁寧に説明しても、
「相手が理解しない」のではなく、
“そもそも理解の入り口が違う”ということが起きています。

その違いを知らないまま努力を続けると、
あなたの尊厳は静かに、そして確実に疲弊します。

■ “自分の感情を基準にしていい”という再設定

尊厳が揺らぐ関係では、
自分の感情の価値がわからなくなる瞬間が増えていきます

・私が敏感すぎるのかな?
・こんなことで傷つく私は弱い?
・もっと耐えろということか?

そんなふうに自分の心を疑いはじめると、
心の土台そのものが細ってしまいます。

でも本当は——
あなたが感じた気持ちこそ、事実であり、根拠であり、あなたの尊厳そのもの。

揺れた感情は、 “あなたがおかしい”のサインではなく、
“何かがあなたを傷つけている”という正確なセンサーです。

■ カサンドラ症候群という言葉が示すもの

この数十年で、ある状態を指す言葉として
「カサンドラ症候群」という概念が広く使われるようになりました。

カサンドラ症候群とは?
医学的な正式診断名ではありませんが、
ASD特性を持つパートナーとの関係で
「感情が届かない」「理解されない」という経験が続き、
次第に心身の不調や自尊心の低下、極度の孤立感が生まれる状態のこと。

優しい人、誠実な人、責任感の強い人、共感性の高い人ほど陥りやすいと言われています。

■ 神経発達症群(DSM-5)とは

* ASD(自閉スペクトラム症)
* ADHD(注意欠如多動症)
などを含む生まれつきの認知特性の分類です。

“性格の癖”ではなく、
情報の受け取り方・考え方・感じ方に、生物学的な違いがある
という理解が大切になります。

■ 心が壊れないようにするための、今日のたった一つの土台

それは

「私が感じている苦しさは正しい」
と、自分の内側の声を信じること。

周りの受け取り方でもなく、
相手の反応でもなく、
“あなた自身の感受性”が、真実。

この視点に立ち返るだけで、
尊厳は静かに、しかし確実に回復していきます。

明日は、
尊厳が削られる典型的な場面にフォーカスし、
その瞬間、内側で何が起きているのかを丁寧に見つめていきます。

今日の内容は“土台づくり”。
明日からの複数回は、その土台をもとに“理解の深まり”をつくるための回になります。

どうか、あなたの心が少しでも軽くなりますように。
いつも大切な時間を割いてお目通しいただき、ありがとうございます。

投稿者プロフィール

速水恭子
速水恭子くれたけ心理相談室(広島支部)心理カウンセラー
皆様がお健やかで穏やかに日々お過ごしになれますよう願っております

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