長く耐えてきた人の内側では、何が起きているのか

昨日は、尊厳が削られる典型的な場面を取り上げました。
その場面が繰り返されると、心の内側ではどんな変化が起きるのでしょうか。

今日は、 “長く耐えてきた人の内側で静かに進むプロセス” を丁寧に言葉にしていきます。

① 自分の感情より「相手の反応」が優先されてしまう

最初に起きるのは、
自分の感情よりも相手の機嫌・反応を優先するようになってしまう こと。

・どう言えば落ち着いて受け止めてもらえるか
・どう振る舞えば波風が立たないか
・相手が納得する形は何か

そう考えることが“基本モード”になり、
本来の自分の望みや感情は、少しずつ後ろに押しやられていきます。

これは弱さではなく、
“生き延びるための防衛” です。

② 「感じないようにする」ことで、心を守ろうとする

痛みが続くと、人の心は次の段階へ入ります。

それは、
感じるとつらいから、感じないようにする という自己防衛。

・悲しみを鈍らせる
・怒りを抑え込む
・期待しないことで傷を最小限にする

こうした“感情の麻痺”は、
心が壊れないように自動的に働く仕組みです。

ただ、感情を閉じ続けると、
“自分の存在感まで薄まるような感覚” が生まれます。

③ 「自分が悪いのでは…」という罪悪感が、静かに根づく

尊厳が削られる関係が長く続くと、
説明のつかない 罪悪感 が内側に育ちはじめます。

・私の伝え方が悪かった?
・もっと耐えるべきなのかな
・私が傷つきやすいだけ?
・話さなければよかったのか?

こうした思考は、
事実の解釈ではなく、
“関係そのものから植えつけられた思い込み” です。

罪悪感を抱くのは、
あなたが誠実で責任感の強い証拠でもあります。

④ 「私が感じていることに価値はあるのか?」という自尊心の低下

長く否定され続けると、
自分の感受性そのものへの信頼 が揺らぎます。

・なぜ私はこんなに苦しいんだろう
・これくらいで傷つく私はおかしい?

そうやって自分を疑い始めると、
内側の軸が揺れ、
“自分の心を守る力” が弱くなっていきます

⑤「何をしても変わらない」という無力感が定着する

最後に訪れるのが、
深い無力感と諦めの感覚 です。

努力しても伝わらず、
話し合っても改善せず、
どれだけ誠実に向き合っても関係が変わらない。

すると、心は
「変わらないことを前提に生きる」
という生存モードに入ります。

これは、あなたが怠けたからでも、弱いからでもない。
ただ、限界まで頑張ってきた証 です。

■ 今日のまとめ

長く耐えてきた人の内側で起きていたのは、
弱さではなく、
心が壊れないように働いた必死の防衛プロセス でした。

そして、どの段階にも必ず共通して流れているのは、

「あなたは悪くない」という真実。

明日は、
こうした内側の変化から “回復の芽がどこにあるのか” を丁寧に見つめ、
自尊心を取り戻すプロセスへと進んでいきます。

どうか、あなたの心に少しでも温かさが戻りますように。
いつも大切な時間を割いてお目通しいただき、心より感謝申し上げます。

投稿者プロフィール

速水恭子
速水恭子くれたけ心理相談室(広島支部)心理カウンセラー
皆様がお健やかで穏やかに日々お過ごしになれますよう願っております

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