認知症も発達障害も“人それぞれ”である理由
認知症や発達障害という言葉を耳にしたとき、
私たちは無意識のうちに、
「こういう状態」「こういう人」という
一定のイメージを思い浮かべてしまいがちです。
けれど実際には、
同じ診断名がついていても、
その人の困りごとも、強みも、人生の風景も、
驚くほど違っています。
脳機能は、決して単独で動いているわけではありません。
感覚、感情、記憶、注意、実行機能…
それらがどのようなネットワークをつくり、
どこで補い合い、どこに負荷がかかるのかは、
一人ひとり異なっています。
そのため、診断名というラベルだけで「わかったつもり」になることには、
少なからず危うさが含まれています。
本来、ノーマライゼーションやインクルーシブという概念は、
違いがあることを前提に、共に生きる社会を整えていくための考え方です。
誰かを「標準」に近づけることではなく、
その人がその人として生きやすくなる条件を、
社会や環境の側が引き受けていく、
その視点を、今一度思い出したいのです。
必要なのは、その人が「何に困っていて、何ならできるのか」を
丁寧に見ていくことです。
「できるようにさせる」ことが、
必ずしもその人の回復や尊厳につながるとは限りません。
できない部分を取り上げるのではなく、
できる形に環境や関わりを調整する。
それだけで、人は驚くほど力を取り戻します。
それぞれ違う脳と、違う人生を生きてきた
一人ひとりの人間がいる、
ただ、それだけのことなのです。
いつもお目通しいただき、心より感謝申し上げます。
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