心理的防護服が、回復を可能にする理由

世の中には、
否定から会話に入る人がいます。
それが、その人自身の癖であることも少なくありません。
必ずしも、こちらを傷つけようとしているとは限らない場合もあります。

しかし、
神経にとっては、理由がどうであれ“刺激”になることがあります。

否定は、脳にとっての小さな危険信号
否定的な言葉を向けられると、
脳は瞬時に「安全かどうか」を判断します。

すると
・身体が緊張する
・言葉が出なくなる
・自分の感じ方を疑い始める
こうした反応が起こります。

これは、性格や意志の問題ではありません。
神経系が身を守ろうとする、ごく自然な反応です。

特に、長いストレスやトラウマを経験してきた人ほど、
この反応は起こりやすくなります。

心理的防護服とは、感情を鈍らせることではありません
ここでいう
心理的防護服とは、
・感じないようにすること
・我慢すること
・強くなること
ではありません。

そうではなく、
「これは相手の反射的な反応かもしれない」
「私自身が否定されたわけではない」
と理解して、
必要以上に巻き込まれないための距離を取ること

感情を閉ざすのではなく、
神経を守るための、認知的な装備です。

防護服があると、回復が始まる
否定をそのまま受け止め続けていると、
神経は常に緊張した状態になります。

けれど、
距離を取れる
抱え込まなくていい
自分を責めすぎない

そんな状態が続くと、
脳は少しずつ「今は安全だ」と判断し始めます。

今の状態には理由があり、回復の仕組みがあります。

回復とは、
意志の力で自分を変えることではありません。

守られた状態が一定期間続いたとき、
もともと備わっていた
考える力、感じる力、選ぶ力が、
自然に戻ってくるプロセスです。

回復は、訓練ではなく環境への反応
脳科学の視点では、
回復は訓練の成果というより、環境への反応として起こります。

否定されない
急かされない
評価されない

そんな時間が積み重なることで、
神経は自ら調整を始めます。

その結果として、
言葉が少し出やすくなったり、
考えがまとまったり、
「私はどう感じる?」と思える瞬間が戻ってきます。

回復は、静かに起こるもの
ある日突然、元気になるわけではありません。
・今日は少し考えられた
・前より疲れにくかった
・否定から距離を取れた
そんな小さな変化が、回復のサインです。
心理的防護服を身につけることも、
その大切な一部です。

おわりに
誰かが否定から話し始める癖を持っていたとしても、
あなたが無防備でいる必要はありません。

心理的防護服は、
人を拒絶するためのものではなく、
自分の神経を守るための選択です。

守られた状態が続いたとき、
人はちゃんと、回復していきます。

いつもお目通しいただき、心より感謝申し上げます。

投稿者プロフィール

速水恭子
速水恭子くれたけ心理相談室(広島支部)心理カウンセラー
皆様がお健やかで穏やかに日々お過ごしになれますよう願っております

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